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山田工業所の中華鍋がプロに選ばれる理由


一番はね、金型を使って作ってないことなんですね。金型を使うと、100%おんなじものしかできないんです。大きいもの、深いものを欲しいときには金型を作り直すことになる。ところがウチはそもそも金型がないから、まあ簡単っていうか。「板の厚さ、直径、深さがいくつで」と言われると、たたいてできあがっちゃうんです。鍋が1枚2枚でも商売になるんですよ。

──わりと名のあるお店や料理人からの細かいオーダーも引き受けることができるんですね。

それぞれみんな、昔修行してたところの鍋が一番使いやすいんで。浅いのもあれば深いのもあるわ、重いのもあれば軽いのもある。そういう注文があれば納められるのがウチなんですね。


──鍋を作る方法には金型プレスや鋳造(ちゅうぞう)もある中で、手間も時間もかかる「打ち出し」でやっている理由はなんですか。

まず鋳造はね、落っことすとすぐ割れちゃうんで。鍋を作るには、プレスにするか、へら絞りにするか、たたいて打ち出しで作るか。その3つがあるんです。プレスでやると同じものしかできないし、どこの会社でもできちゃう。へら絞りも、ぎゅーっと曲げていくための型がある。すると打ち出しが一番特徴あるのかなって。いっとき、もう全然間に合わないくらい忙しいときにプレスも考えたんだけど、これやっちゃうとみんなと一緒になっちゃうから(社長はここでニヤリと笑った)。打ち出しにこだわろうと。

──ところで「打ち出し」とは、日本刀を作ったりするときの鍛造(たんぞう)と考えていいんでしょうか。鉄をたたいていくと分子が詰まってきて硬く粘りのあるものになるといいますけど。

それですよ。鍛造。鉄板って鉄の分子がこういうふうに縦方向に重なってるんですね。プレスでやると、この組織が横方向に離れるんです。伸ばすから。ところがたたくとこの組織が詰まってくるんです。0.何ミリって厚みのものを作るときに、プレスでぐーっと伸ばしたやつだと隙間ができて穴が開くんですよ。ところが、たたいてつぶしてるから厚さ0.何ミリまでできちゃうわけ。薄くはなるけど弱くはならない。これが鍛造、打ち出しのいいところです。

──鉄の中華鍋やフライパンは一生ものと言われることが多いです。あまり買い替えたりしない性質のものだとしたら、売上をどのように伸ばしているんですか。

ウチはだいたい業務専門でやってるからさ。業務だと手荒く使うから、1枚だいたい100日くらい、3カ月ちょっとで壊れるんですよ。あの火力でしょ、それでガンガン振るでしょ。それで薄い板でしょ。だからもう消耗品なんですよ。家庭用だと手入れ次第で一生もの。「代々使ってます」って人もけっこういますしね。

工場を見学

山田工業所の中華鍋は、どのように作られているのだろうか。
工場を見学させてもらった。
たくさんの職人が一斉に金づちみたいなものを振るっている光景を想像していたが、実際は10人に満たないほどの職人が、自分専用の機械の前で黙々と作業していた。
広さはテニスコート2つくらいだろうか。
いわゆる町工場っぽい雰囲気である。

鉄板切り抜き

鉄板の厚みは1.2ミリと1.6ミリ。
鍋の直径は24センチから始まり3センチ刻みで大きくなる。
これを機械で切り抜いて鍋の形にする。
本体の丸い部分と取っ手になる四角い部分がつながったものだ。

打ち出し(鍛造)

これが打ち出し製法の根幹部分。
機械のハンマーでじっくりたたいて鍋の形にしていく。
一度に10枚くらい重ねてたたくため、まとめて太いネジできっちり留めている。


上から伸びている長い棒状のものがハンマーである。職人各々が専用の打ち出し機械を担当する。
つまり自分専用のハンマーを持つのだ。
動力も油圧だったりベルト駆動だったりとまちまちで、ハンマーの位置や角度もすべて職人によって異なる。


このとき作っていたのは「返し鍋」。
鍋を振って食材をひっくり返しやすくするため奥側のへりが高くなっているものだ。


この「返し鍋」をたたけるのは、いま作業している斉藤さんだけという。
ハンマーの動きを見ながら、ハンドルで微妙に位置を調整し続ける。


ハンマーの滑りをよくするためのオイルがきれいな紋を描く。

へりを起こす

打ち出し作業で作られた鍋はへりの部分が平らなままなので、プレス機で起こす。

へりと底をたたいて調整する

プレス機で起こしたへりは波打っているので、これをハンマーでたたいて曲面を滑らかにする。

鍋底の部分もハンマーでたたいて曲面を整える。

打刻

富士山に「打出し」のマーク。
山田工業所のブランドを打刻する。数字は鍋の直径を示す。
撮影不可だったが、他にもいくつか有名なお店の刻印もあった。山田工業所は多くの一流店から鍋の製作を引き受けている。

取っ手を曲げる

板状のままだった取っ手部分を丸める機械。
こうして鍋の形ができあがっていく。
ちなみに両手鍋の場合は取っ手を溶接する。

電動ヤスリでバリ取り

鍋のへりの断面に、切り出したときのささくれや鋭利な角が残っているので、その部分をサンダー(電動ヤスリ)で削る。
1枚1枚の手作業である。

ワニスに浸して乾燥

写真手前にあるのがワニスの槽。
ここに中華鍋をドボンと浸して乾燥させることで、金属表面にさび止めの被膜ができあがる。
買ったばかりの鉄鍋をシーズニングするときに焼くのはこのワニスを除去するため。

出荷

出荷を待ついろんなサイズの鍋。
大きさ、厚みごとに重ねられている。
さらに深さや重さが微妙に異なる特注品もあるのだから、商品のラインアップで見ると、実はすごく多いのである。


こちらは両手鍋。リベットと溶接で取っ手がつけられる。機械式ハンマーでたたいた規則的な跡が見えるだろうか。
打ち出し式特有の紋が美しい。

家庭で使う場合に注意すること
鉄だからさびますよ。さびて文句を言われるのが、ウチ一番困るんですけど、そういうのが結構あるんですよ(笑)。炒めものって常に油を使うじゃないですか。そしたら洗剤で落とさないでくださいと。お湯でサーッと軽く洗うだけ。それで少しずつ油が乗ってくるから。

──料理で使った油がちょっとずつ乗る感じですね。

要は、鉄っていきなりはいい鍋じゃないんですよ。使い込んでいけばどんどん使いやすくなってくるってのが鉄鍋なんです。使い方ひとつでじわじわと変わってくる。洗剤でゴシゴシと洗うのは鉄鍋にはよくない。

なるべく油を残して残して。なんか汚らしいなって思うかもしれませんけど、どっちにしろまず最初に熱してバイキンを殺すんですよ、と。最初に火にかけて、煙が出てくるまであぶっとくんですよ。煙が出だしたら油をひくのが基本なんです。いきなり具を入れて火にかけたら、それはくっついちゃいますよ(笑)。

会社の歴史と成り立ち

山田豊明社長は山田工業所の二代目。
お父様が初代である。

ウチの親父はそば屋の小僧やってたんで、そのときに作り始めたらしいんですよ。戦後、道具がない時に、鍋が無いと物が食えねえ、中華鍋なら簡単に湾曲できるだろうと考えて。当時は鉄が無い時代だけどドラム缶だけはたくさんある。ドラム缶を切って、サイズをいろいろ分けて、それを湾曲してったのが始まり。鍋を作って使ったりしてたらいろんなとこから問い合わせが入って、じゃあ自分は鍋屋になろうと。そういう感覚みたいです。

──「あそこのそば屋の山田が作る鍋はいいらしいぞ」と評判になったりしたんでしょうか。

「いいぞ」っていうかね(笑)。手でトントンたたいて作んなきゃいけないって、いまは大変に思うけど、当時はそれが当たり前なんですよ。そんなことしかできないからね。地面に鍋の大きさの穴掘って、そこに鉄板置いてたたいてたって。

──地面が鍋の型みたいになってたんですね(笑)。

できても1日に4枚、5枚の世界だったらしいですね。ハンマーも自分の会社でいろいろ改造して。粗落とし用とか、最後の仕上げ用とか3種類くらい作って。そういうのは子どもの頃に見てて記憶に残ってるんですね。小学校の時は、築地だとか合羽橋だとか、私がお鍋持って配達に行ってました。都電は何番に乗るのかとか、行く道を聞いてね。子どもだからそんなにいっぱい持てないし、ワニスが乾かないうちに持っていくから。帰ってくるとズボンがニスでびちょびちょなんです(笑)。

チタン製中華鍋への挑戦
山田工業所には純チタン製の中華鍋「チタニア」というブランドがある。
チタンという金属の特徴は「軽量」「硬い」「さびない」。
鉄と比べたら3分の2ほどの軽さである。鉄製中華鍋の弱点「重い」「さびる」を克服できる素材だ。
軽くてさびないのはいいが、この硬さのおかげで加工が難しく、ハンマーでたたいて成型することなど不可能だと思われていた。
山田工業所は、チタンの「打ち出し」に成功した町工場なのである。
チタンをたたこうと思ったきっかけというか、チタン鍋ができるまでのお話が非常に興味深く、運命的だった。

本稿のメイン部分と言っていい部分なのでお読みいただきたい。下の写真、白っぽいのがチタン製中華鍋である。


これもすごい偶然が重なるんですけど。あのね、一番最初にね、北海道のお客さんから電話で「チタンでこれこれこういうものはできないか」って言われて。こちらはチタンなんて知らないわけですよ。「なんだそのチタンってのは?」と。そのときちょうどウチに工場改善のコンサルタントが来てたの。それも1年に1回、契約更新のときの1時間くらいしかいないんですよ。

──すごいタイミングで問い合わせが。そしてまるきり知らない素材だったんですね。

コンサルタントの人にチタンの話をしたら「私のお客さんにチタン扱ってる会社があるから1回やってみませんか」って。それでそこから取り寄せたんだけど、こんな小さいのが5,000円もするんだよ! チタンのことはなにも知らないし、こりゃ大変だなと。

で、たまたまこの近所に、当時は日本鋼管、今のJFEの子会社があったの。そこでこの話をしてたら、じゃあ日本鋼管に問い合わせしようよって。そしたらチタンの部署があって。それでそこの室長さんがウチに来てくれて「そりゃおもしろいな」って。それでどういうことが起きたかって、その高い材料を無償提供! その室長さん、「山田は技術で損しろ。うちは材料で損するから」って言ってくれて。

──金属加工に関しては世界トップレベルの企業と、ご近所さん感覚で共同研究って感じじゃないですか!

鍋にするまでにもいろんな工程があって。NKK(日本鋼管)のチタンの部署は、そういうことをできる業者をいっぱい知ってるわけ。難題が出ると「ここ行こう、あそこ行こう」って全部やってくれて。チタンの溶接は私がNKKの研究所に行って教えてもらって。だから、そういうすごいラッキーな流れがあったのね。
最初は、業務用が鉄だからチタンは家庭用でやろうって思ってて。ところが、ある展示会に出したら、見に来る人がみんな職人さんなのよ。みんな、腱鞘炎だとか、年取って鍋が振れなくなったんだと言うのね。チタンは軽いから、鉄の鍋が重くて使えなくなった人が見に来たんだね。で、「これは業務用だよー!」なんて言われて(笑)。

そしたら価格が高いものだから、「これは儲かる」ということで、なぜか新潟からもどんどんチタンの鍋が出てきちゃったのね。当時は、新潟とウチのチタンの違いなんかわかんないわけですよ。わかるのは、ウチの方が値段が高いということだけ(笑)。チタンの鍋は高いから、修理は無料でやってたんです。新潟の鍋もお金をもらって修理した。そこで違いがわかったんですよ。ウチのやつは溶接が効くんです。ところが新潟のやつは穴が開いちゃうんです。薄すぎて、火を入れるとぴゅっと。だから修理は不可能なんですね。
当時、NKKの人が言ってたのは、チタンでいろんな湾曲加工をやっても、ほとんどがこう、ラグビーボールみたいになっちゃうって。やっぱり分子がそういう性質なんだね。ところがウチがたたいたら鍋ができちゃった。「これはヨソはまねができねえぞ」なんて言ってたら、ちゃーんとヨソからも出回ってた(爆笑)。

──金型プレスでもチタン鍋ができちゃったってことですか。

チタンは温度をある程度上げると、あめみたいになる金属なんですよ。硬い硬いっていわれるけど、熱を加えて加工すると簡単にプレスできちゃうんです。うちは冷間(鍛造)ですけどね。チタンはプレスできないってNKKの人が言うからその気になってたら、いきなり安いのがいっぱい出てきちゃって(笑)。


「36,000円もする純チタン製の中華鍋」ということでテレビ局が興味を持ち、朝の番組で紹介してくれることになったという。
当時は景気が良かったこともあり、放送後は注文の電話が鳴りっぱなし。
そのお礼としてテレビのスタッフにチタン製中華鍋を1枚ずつ送ったところ、某有名アナウンサーがいたく気に入り、テレビ局をまたいで多くの番組で繰り返し紹介してくれたらしい。
ゲストを呼んで料理してもらう番組なのに、ゲストを差し置いてそのアナウンサーが自分で料理する始末。
そのおかげで再びたいへんな注文数になったという。

だから、運ってのがあるんだね。たまたま電話がいいタイミングで来て、作り出したら材料を無償提供でしょ。そんでいろんな課題がクリアできて、テレビで取り上げてもらって、すごい売り上げになって、そしたらすぐ税務署が飛んできましたよ。

──わーっはっはっ! すげえオチです!

年中売れてるけど、鉄のときは来ないんですよ。チタンの時はすぐに来て、売上帳と運送屋の伝票を照らし合わせましたよね。税務署の人と会うことがあったら、いつもこの話をしてやるんですよ(笑)。

「おたくから買ったらその老夫婦の生活はどうなっちゃうんだ」

マイナスになるのは商売じゃないってのが私の考え方だから。いろんな営業マンが来て「いま仕入れてるものより安いものが結構あるんですよ」と言ったりするんですけど、そういう人は断って帰しちゃう。
どういうことかっていうと、安くても悪かろうとか、あとオイルショックみたいに物が無くなった時に、いままでの取引だと優先的に回してもらえる。ところが、安いですよって来たところは「今は品物がありません」っつって値段が上がっちゃうんだよ。今までそういうのたくさん経験してるから。

──ああ、単なる商売相手としてしか付き合ってくれないという。

今は荷造りバンドを掛けてるけど、昔は荒縄でくくって出荷してたわけ。その荒縄は老夫婦でやってるお店から仕入れてたわけですね。別の所から来た営業マンが「ウチはもっと安いですよ」って言うけど、おたくから買ったらその老夫婦の生活はどうなっちゃうんだって話になっちゃうわけ。だからその老夫婦からずっと買ってた。あちらがもうお店辞めるってときは涙を流してくれてね。
そういうのがあるからね。だから(安いからって)仕入先を変えるってことはやらない。要は、それをやっちゃうと、どこかマイナスが出てきちゃうから。「みんなプラスで行きましょう」というのが私の考え方。

──「安い」ということは、どこかに損をしている人がいるんですよね。

そう、そうなんです。中には仕入先を変えてみんなで得してるところもあると思うんですけど、そんなのまれだと思うんですよね。けっこうそういうとこにこだわっちゃってるから、儲かんねえんだよウチ(笑)。


山田工業所は値引きをしない。
知り合いだからといって安く譲ることもなければ、「工場直販」のようなセールもしない。
買いたいときは、卸している業者か小売店から買ってほしいというスタンスである。

「山田工業所の鍋をトラックいっぱい使ってるんだ」という会社がこの間来て「悪いけど安くしてくれ」と言うから、じゃあヨソの鍋使ってくださいと。ウチは値段をまけることはできない。一生懸命作って1日にできる枚数は同じ。オートメーションでどんどんできるのと違って、残業やらせて多く作ると1枚のコストが高くなっちゃう。そういうものを、まけてくれということ自体が、私はもうダメなんですね。

そこも結構大きなチェーン、有名なお店なんですけど、今度メニューに唐揚げを入れたと。今までは網を使ってたんだけど、異物混入の心配があるんで、網からほかのものに変えたいという相談も一緒に来て。どうしましょうっていうから、私が考えて、こういうの作ってみたと伝えたら「じゃあ本部まで来てくれ」って話になって。なんで俺が行かなきゃいけねえんだと(笑)。

──相談されたから試作したのに呼びつけられるとは、ずいぶんなお話ですね(笑)。

「こういうものは本部で話してもまとまらねえんだ。現場に持っていけ」と、1枚作ってあげたわけ。そのときもまだ「予算があるから(安くしたい)」なんていうから。じゃあわかったと。ウチは作れないけどこれ1枚あげるから、どこか作れるところを他で探せと。

──えええー? 失礼な申し出をしてきた業者に発明のアイデアをポンとあげちゃうんですか!

まあ、それでいまウチに注文たくさん来てますけど(笑)。

──ぶははは! 結局、作れるところが他に見つからなかったという。

あのね、やはり、彼らはそういうプロじゃないから。網だと油の切りが早いんですね。ところがそれ以外だと切りが悪くなるんです。どういうことかというと、やっぱり穴の開いたものを使うんだけど、唐揚げが穴をふさいじゃうんです。だから油が切れないんです。

──なるほど。たとえば穴開きの鉄板でも、唐揚げそのものがその穴のフタになっちゃうと。

私の考えたやつは中をデコボコにしちゃうわけ。唐揚げが重なっても穴をふさがないように。それで渡したの。そしたら、どこにも作ってもらえないんで。ヨソは、平らなうちに穴を開けてから湾曲させるんで、穴が楕円になっちゃうんですよ。ウチは、湾曲させたあと穴を開けるから、丸なんです。どういう違いがあるかというと、穴が楕円だと油の膜が張っちゃうんですね。丸いと落っこちるんです。チタンなんかも、ウチで最初に作ってヨソがやったときに、私うれしかったもんね。オレの考えたことをまねしてくれるんだって。えへへへ。


──あっ。他社にパクられても「ちくしょうまねしやがって」とか思わないんですか。

いやいや。それは絶対自分のマイナスにしかならないから。ちくしょうと思ったところで変えられないでしょ。だから喜んじゃう(笑)。すると病気にならないの。人も恨まなくなるしね。

──他社の製品を見て、すごいと思ったりまねしたいと思ったこともないんですか。

あの……、ヨソがだいたいウチのまねでやってるから(笑)。あっはっは。こういうふうに鍋本体と取っ手を一体物で作ったのもウチが最初で、ヨソがまねしてきた。昔は胴体と手が別で、あとでくっつけてたのね。

だから、あまりヨソは気にしないですよ。気にしたところでしょうがないですもん。ヨソはウチより安く売って、枚数もたくさんできて、それだけしてりゃ十分なわけです。値段に関してはウチもけっこう無理は聞いてるつもりなんだけど、こればっかりはしょうがない話でね。ウチはもうお得意さんも増やしてないし、決められたとこだけでやってるから。ウチから直接だったら安く買えるだろうって言ってくる料理人もたまにいるけど、それもやらないし。申し訳ないけど取引してる業者を通してくださいと。

──直接は売らないで、必ず問屋かお店を通すということですね。

裏切って信用を無くすのって一瞬でできちゃうんですよ。ところが信用って長い年月をかけないとできない。そういう人が来ることで1秒2秒で信用を崩しちゃったら、やはりそれもウチの会社の失敗になる。だからそういうことはやらないで。知ってる人でも必ずお客さん(小売店)を通してくれと言っているんです。

たたくことでいろんなものが作れる


これは楽器なんですけど。スティールパン。「パン」だからお鍋なんです。ドラム缶をたたいて。これでNHKで生放送やったんです、ここで。女学生呼んで。私とアナウンサーと一緒に演奏したんですよ。これも一時期商売したんだけど、こういうことやっちゃ、うちの信用がなくなると思った。

──信用、ですか。楽器も作れるなんて技術力すごそうですけど。

要は、これ一音一音が商品なんですよ。一個狂うと商品じゃなくなっちゃうわけ。しかも倍音だから、このひとつの「ド」の音の中に、いろんな音を入れないといけないわけ。じゃないと木琴とかのポンポンっていう音になっちゃう。これはピンピンと鳴る。

ここに共鳴させる音を一緒に入れるわけ。だから音痴の人はできないの、わはは。こっちをハンマーでたたいてその音になっても、次のところをたたくとそこに引っ張られて違う音になっちゃう。毎日やってるとおかしくなってきますよ。 

鉄をハンマーでたたいて加工することに特化した工場なので、鍋に限らずいろんなものを作ることができる。
スティールパンしかり。特注サイズの鍋しかり。唐揚げ用の新発明しかり。
大きな設備を必要としないので、設計図や金型が現存しない古い鍋のレストアや復元にも身軽に挑戦できる。

お客さんからの相談で、先祖代々の鍋があって、それがもうどこにも売ってないと。それを作ってもらえないかというのが来て。で、作って納めるとね、まず最初に作った物、この間はかりんとうだったけど、そういうのがウチに届くんだ。
昔からのお菓子屋さんの鍋とか、代々やってるからだんだん傷んでくるでしょ。ところが新しいのが欲しくても、もうどこにもないんだよ。
ウチはそれ、たたいて作れるからさ。


中華鍋を打ち出して70年。
プロから圧倒的な信頼を得ている山田工業所。
確かな技術への自信に裏打ちされたチャレンジ精神と、昔気質の義理に厚い姿勢が同居した、理想的な町工場である。
とりあえず鉄の中華鍋買ってチャーハン作ってみてください。「こういうことか!」とびっくりすると思います。

横浜中華街のプロに選ばれる中華鍋の専門メーカー「山田工業所」さんから教わったこと - メシ通 | ホットペッパーグルメ (via darylfranz)

(via shayol)

Source: hotpepper.jp

  • 6 months ago > darylfranz
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山田工業所の中華鍋がプロに選ばれる理由


一番はね、金型を使って作ってないことなんですね。金型を使うと、100%おんなじものしかできないんです。大きいもの、深いものを欲しいときには金型を作り直すことになる。ところがウチはそもそも金型がないから、まあ簡単っていうか。「板の厚さ、直径、深さがいくつで」と言われると、たたいてできあがっちゃうんです。鍋が1枚2枚でも商売になるんですよ。

──わりと名のあるお店や料理人からの細かいオーダーも引き受けることができるんですね。

それぞれみんな、昔修行してたところの鍋が一番使いやすいんで。浅いのもあれば深いのもあるわ、重いのもあれば軽いのもある。そういう注文があれば納められるのがウチなんですね。


──鍋を作る方法には金型プレスや鋳造(ちゅうぞう)もある中で、手間も時間もかかる「打ち出し」でやっている理由はなんですか。

まず鋳造はね、落っことすとすぐ割れちゃうんで。鍋を作るには、プレスにするか、へら絞りにするか、たたいて打ち出しで作るか。その3つがあるんです。プレスでやると同じものしかできないし、どこの会社でもできちゃう。へら絞りも、ぎゅーっと曲げていくための型がある。すると打ち出しが一番特徴あるのかなって。いっとき、もう全然間に合わないくらい忙しいときにプレスも考えたんだけど、これやっちゃうとみんなと一緒になっちゃうから(社長はここでニヤリと笑った)。打ち出しにこだわろうと。

──ところで「打ち出し」とは、日本刀を作ったりするときの鍛造(たんぞう)と考えていいんでしょうか。鉄をたたいていくと分子が詰まってきて硬く粘りのあるものになるといいますけど。

それですよ。鍛造。鉄板って鉄の分子がこういうふうに縦方向に重なってるんですね。プレスでやると、この組織が横方向に離れるんです。伸ばすから。ところがたたくとこの組織が詰まってくるんです。0.何ミリって厚みのものを作るときに、プレスでぐーっと伸ばしたやつだと隙間ができて穴が開くんですよ。ところが、たたいてつぶしてるから厚さ0.何ミリまでできちゃうわけ。薄くはなるけど弱くはならない。これが鍛造、打ち出しのいいところです。

──鉄の中華鍋やフライパンは一生ものと言われることが多いです。あまり買い替えたりしない性質のものだとしたら、売上をどのように伸ばしているんですか。

ウチはだいたい業務専門でやってるからさ。業務だと手荒く使うから、1枚だいたい100日くらい、3カ月ちょっとで壊れるんですよ。あの火力でしょ、それでガンガン振るでしょ。それで薄い板でしょ。だからもう消耗品なんですよ。家庭用だと手入れ次第で一生もの。「代々使ってます」って人もけっこういますしね。

工場を見学

山田工業所の中華鍋は、どのように作られているのだろうか。
工場を見学させてもらった。
たくさんの職人が一斉に金づちみたいなものを振るっている光景を想像していたが、実際は10人に満たないほどの職人が、自分専用の機械の前で黙々と作業していた。
広さはテニスコート2つくらいだろうか。
いわゆる町工場っぽい雰囲気である。

鉄板切り抜き

鉄板の厚みは1.2ミリと1.6ミリ。
鍋の直径は24センチから始まり3センチ刻みで大きくなる。
これを機械で切り抜いて鍋の形にする。
本体の丸い部分と取っ手になる四角い部分がつながったものだ。

打ち出し(鍛造)

これが打ち出し製法の根幹部分。
機械のハンマーでじっくりたたいて鍋の形にしていく。
一度に10枚くらい重ねてたたくため、まとめて太いネジできっちり留めている。


上から伸びている長い棒状のものがハンマーである。職人各々が専用の打ち出し機械を担当する。
つまり自分専用のハンマーを持つのだ。
動力も油圧だったりベルト駆動だったりとまちまちで、ハンマーの位置や角度もすべて職人によって異なる。


このとき作っていたのは「返し鍋」。
鍋を振って食材をひっくり返しやすくするため奥側のへりが高くなっているものだ。


この「返し鍋」をたたけるのは、いま作業している斉藤さんだけという。
ハンマーの動きを見ながら、ハンドルで微妙に位置を調整し続ける。


ハンマーの滑りをよくするためのオイルがきれいな紋を描く。

へりを起こす

打ち出し作業で作られた鍋はへりの部分が平らなままなので、プレス機で起こす。

へりと底をたたいて調整する

プレス機で起こしたへりは波打っているので、これをハンマーでたたいて曲面を滑らかにする。

鍋底の部分もハンマーでたたいて曲面を整える。

打刻

富士山に「打出し」のマーク。
山田工業所のブランドを打刻する。数字は鍋の直径を示す。
撮影不可だったが、他にもいくつか有名なお店の刻印もあった。山田工業所は多くの一流店から鍋の製作を引き受けている。

取っ手を曲げる

板状のままだった取っ手部分を丸める機械。
こうして鍋の形ができあがっていく。
ちなみに両手鍋の場合は取っ手を溶接する。

電動ヤスリでバリ取り

鍋のへりの断面に、切り出したときのささくれや鋭利な角が残っているので、その部分をサンダー(電動ヤスリ)で削る。
1枚1枚の手作業である。

ワニスに浸して乾燥

写真手前にあるのがワニスの槽。
ここに中華鍋をドボンと浸して乾燥させることで、金属表面にさび止めの被膜ができあがる。
買ったばかりの鉄鍋をシーズニングするときに焼くのはこのワニスを除去するため。

出荷

出荷を待ついろんなサイズの鍋。
大きさ、厚みごとに重ねられている。
さらに深さや重さが微妙に異なる特注品もあるのだから、商品のラインアップで見ると、実はすごく多いのである。


こちらは両手鍋。リベットと溶接で取っ手がつけられる。機械式ハンマーでたたいた規則的な跡が見えるだろうか。
打ち出し式特有の紋が美しい。

家庭で使う場合に注意すること
鉄だからさびますよ。さびて文句を言われるのが、ウチ一番困るんですけど、そういうのが結構あるんですよ(笑)。炒めものって常に油を使うじゃないですか。そしたら洗剤で落とさないでくださいと。お湯でサーッと軽く洗うだけ。それで少しずつ油が乗ってくるから。

──料理で使った油がちょっとずつ乗る感じですね。

要は、鉄っていきなりはいい鍋じゃないんですよ。使い込んでいけばどんどん使いやすくなってくるってのが鉄鍋なんです。使い方ひとつでじわじわと変わってくる。洗剤でゴシゴシと洗うのは鉄鍋にはよくない。

なるべく油を残して残して。なんか汚らしいなって思うかもしれませんけど、どっちにしろまず最初に熱してバイキンを殺すんですよ、と。最初に火にかけて、煙が出てくるまであぶっとくんですよ。煙が出だしたら油をひくのが基本なんです。いきなり具を入れて火にかけたら、それはくっついちゃいますよ(笑)。

会社の歴史と成り立ち

山田豊明社長は山田工業所の二代目。
お父様が初代である。

ウチの親父はそば屋の小僧やってたんで、そのときに作り始めたらしいんですよ。戦後、道具がない時に、鍋が無いと物が食えねえ、中華鍋なら簡単に湾曲できるだろうと考えて。当時は鉄が無い時代だけどドラム缶だけはたくさんある。ドラム缶を切って、サイズをいろいろ分けて、それを湾曲してったのが始まり。鍋を作って使ったりしてたらいろんなとこから問い合わせが入って、じゃあ自分は鍋屋になろうと。そういう感覚みたいです。

──「あそこのそば屋の山田が作る鍋はいいらしいぞ」と評判になったりしたんでしょうか。

「いいぞ」っていうかね(笑)。手でトントンたたいて作んなきゃいけないって、いまは大変に思うけど、当時はそれが当たり前なんですよ。そんなことしかできないからね。地面に鍋の大きさの穴掘って、そこに鉄板置いてたたいてたって。

──地面が鍋の型みたいになってたんですね(笑)。

できても1日に4枚、5枚の世界だったらしいですね。ハンマーも自分の会社でいろいろ改造して。粗落とし用とか、最後の仕上げ用とか3種類くらい作って。そういうのは子どもの頃に見てて記憶に残ってるんですね。小学校の時は、築地だとか合羽橋だとか、私がお鍋持って配達に行ってました。都電は何番に乗るのかとか、行く道を聞いてね。子どもだからそんなにいっぱい持てないし、ワニスが乾かないうちに持っていくから。帰ってくるとズボンがニスでびちょびちょなんです(笑)。

チタン製中華鍋への挑戦
山田工業所には純チタン製の中華鍋「チタニア」というブランドがある。
チタンという金属の特徴は「軽量」「硬い」「さびない」。
鉄と比べたら3分の2ほどの軽さである。鉄製中華鍋の弱点「重い」「さびる」を克服できる素材だ。
軽くてさびないのはいいが、この硬さのおかげで加工が難しく、ハンマーでたたいて成型することなど不可能だと思われていた。
山田工業所は、チタンの「打ち出し」に成功した町工場なのである。
チタンをたたこうと思ったきっかけというか、チタン鍋ができるまでのお話が非常に興味深く、運命的だった。

本稿のメイン部分と言っていい部分なのでお読みいただきたい。下の写真、白っぽいのがチタン製中華鍋である。


これもすごい偶然が重なるんですけど。あのね、一番最初にね、北海道のお客さんから電話で「チタンでこれこれこういうものはできないか」って言われて。こちらはチタンなんて知らないわけですよ。「なんだそのチタンってのは?」と。そのときちょうどウチに工場改善のコンサルタントが来てたの。それも1年に1回、契約更新のときの1時間くらいしかいないんですよ。

──すごいタイミングで問い合わせが。そしてまるきり知らない素材だったんですね。

コンサルタントの人にチタンの話をしたら「私のお客さんにチタン扱ってる会社があるから1回やってみませんか」って。それでそこから取り寄せたんだけど、こんな小さいのが5,000円もするんだよ! チタンのことはなにも知らないし、こりゃ大変だなと。

で、たまたまこの近所に、当時は日本鋼管、今のJFEの子会社があったの。そこでこの話をしてたら、じゃあ日本鋼管に問い合わせしようよって。そしたらチタンの部署があって。それでそこの室長さんがウチに来てくれて「そりゃおもしろいな」って。それでどういうことが起きたかって、その高い材料を無償提供! その室長さん、「山田は技術で損しろ。うちは材料で損するから」って言ってくれて。

──金属加工に関しては世界トップレベルの企業と、ご近所さん感覚で共同研究って感じじゃないですか!

鍋にするまでにもいろんな工程があって。NKK(日本鋼管)のチタンの部署は、そういうことをできる業者をいっぱい知ってるわけ。難題が出ると「ここ行こう、あそこ行こう」って全部やってくれて。チタンの溶接は私がNKKの研究所に行って教えてもらって。だから、そういうすごいラッキーな流れがあったのね。
最初は、業務用が鉄だからチタンは家庭用でやろうって思ってて。ところが、ある展示会に出したら、見に来る人がみんな職人さんなのよ。みんな、腱鞘炎だとか、年取って鍋が振れなくなったんだと言うのね。チタンは軽いから、鉄の鍋が重くて使えなくなった人が見に来たんだね。で、「これは業務用だよー!」なんて言われて(笑)。

そしたら価格が高いものだから、「これは儲かる」ということで、なぜか新潟からもどんどんチタンの鍋が出てきちゃったのね。当時は、新潟とウチのチタンの違いなんかわかんないわけですよ。わかるのは、ウチの方が値段が高いということだけ(笑)。チタンの鍋は高いから、修理は無料でやってたんです。新潟の鍋もお金をもらって修理した。そこで違いがわかったんですよ。ウチのやつは溶接が効くんです。ところが新潟のやつは穴が開いちゃうんです。薄すぎて、火を入れるとぴゅっと。だから修理は不可能なんですね。
当時、NKKの人が言ってたのは、チタンでいろんな湾曲加工をやっても、ほとんどがこう、ラグビーボールみたいになっちゃうって。やっぱり分子がそういう性質なんだね。ところがウチがたたいたら鍋ができちゃった。「これはヨソはまねができねえぞ」なんて言ってたら、ちゃーんとヨソからも出回ってた(爆笑)。

──金型プレスでもチタン鍋ができちゃったってことですか。

チタンは温度をある程度上げると、あめみたいになる金属なんですよ。硬い硬いっていわれるけど、熱を加えて加工すると簡単にプレスできちゃうんです。うちは冷間(鍛造)ですけどね。チタンはプレスできないってNKKの人が言うからその気になってたら、いきなり安いのがいっぱい出てきちゃって(笑)。


「36,000円もする純チタン製の中華鍋」ということでテレビ局が興味を持ち、朝の番組で紹介してくれることになったという。
当時は景気が良かったこともあり、放送後は注文の電話が鳴りっぱなし。
そのお礼としてテレビのスタッフにチタン製中華鍋を1枚ずつ送ったところ、某有名アナウンサーがいたく気に入り、テレビ局をまたいで多くの番組で繰り返し紹介してくれたらしい。
ゲストを呼んで料理してもらう番組なのに、ゲストを差し置いてそのアナウンサーが自分で料理する始末。
そのおかげで再びたいへんな注文数になったという。

だから、運ってのがあるんだね。たまたま電話がいいタイミングで来て、作り出したら材料を無償提供でしょ。そんでいろんな課題がクリアできて、テレビで取り上げてもらって、すごい売り上げになって、そしたらすぐ税務署が飛んできましたよ。

──わーっはっはっ! すげえオチです!

年中売れてるけど、鉄のときは来ないんですよ。チタンの時はすぐに来て、売上帳と運送屋の伝票を照らし合わせましたよね。税務署の人と会うことがあったら、いつもこの話をしてやるんですよ(笑)。

「おたくから買ったらその老夫婦の生活はどうなっちゃうんだ」

マイナスになるのは商売じゃないってのが私の考え方だから。いろんな営業マンが来て「いま仕入れてるものより安いものが結構あるんですよ」と言ったりするんですけど、そういう人は断って帰しちゃう。
どういうことかっていうと、安くても悪かろうとか、あとオイルショックみたいに物が無くなった時に、いままでの取引だと優先的に回してもらえる。ところが、安いですよって来たところは「今は品物がありません」っつって値段が上がっちゃうんだよ。今までそういうのたくさん経験してるから。

──ああ、単なる商売相手としてしか付き合ってくれないという。

今は荷造りバンドを掛けてるけど、昔は荒縄でくくって出荷してたわけ。その荒縄は老夫婦でやってるお店から仕入れてたわけですね。別の所から来た営業マンが「ウチはもっと安いですよ」って言うけど、おたくから買ったらその老夫婦の生活はどうなっちゃうんだって話になっちゃうわけ。だからその老夫婦からずっと買ってた。あちらがもうお店辞めるってときは涙を流してくれてね。
そういうのがあるからね。だから(安いからって)仕入先を変えるってことはやらない。要は、それをやっちゃうと、どこかマイナスが出てきちゃうから。「みんなプラスで行きましょう」というのが私の考え方。

──「安い」ということは、どこかに損をしている人がいるんですよね。

そう、そうなんです。中には仕入先を変えてみんなで得してるところもあると思うんですけど、そんなのまれだと思うんですよね。けっこうそういうとこにこだわっちゃってるから、儲かんねえんだよウチ(笑)。


山田工業所は値引きをしない。
知り合いだからといって安く譲ることもなければ、「工場直販」のようなセールもしない。
買いたいときは、卸している業者か小売店から買ってほしいというスタンスである。

「山田工業所の鍋をトラックいっぱい使ってるんだ」という会社がこの間来て「悪いけど安くしてくれ」と言うから、じゃあヨソの鍋使ってくださいと。ウチは値段をまけることはできない。一生懸命作って1日にできる枚数は同じ。オートメーションでどんどんできるのと違って、残業やらせて多く作ると1枚のコストが高くなっちゃう。そういうものを、まけてくれということ自体が、私はもうダメなんですね。

そこも結構大きなチェーン、有名なお店なんですけど、今度メニューに唐揚げを入れたと。今までは網を使ってたんだけど、異物混入の心配があるんで、網からほかのものに変えたいという相談も一緒に来て。どうしましょうっていうから、私が考えて、こういうの作ってみたと伝えたら「じゃあ本部まで来てくれ」って話になって。なんで俺が行かなきゃいけねえんだと(笑)。

──相談されたから試作したのに呼びつけられるとは、ずいぶんなお話ですね(笑)。

「こういうものは本部で話してもまとまらねえんだ。現場に持っていけ」と、1枚作ってあげたわけ。そのときもまだ「予算があるから(安くしたい)」なんていうから。じゃあわかったと。ウチは作れないけどこれ1枚あげるから、どこか作れるところを他で探せと。

──えええー? 失礼な申し出をしてきた業者に発明のアイデアをポンとあげちゃうんですか!

まあ、それでいまウチに注文たくさん来てますけど(笑)。

──ぶははは! 結局、作れるところが他に見つからなかったという。

あのね、やはり、彼らはそういうプロじゃないから。網だと油の切りが早いんですね。ところがそれ以外だと切りが悪くなるんです。どういうことかというと、やっぱり穴の開いたものを使うんだけど、唐揚げが穴をふさいじゃうんです。だから油が切れないんです。

──なるほど。たとえば穴開きの鉄板でも、唐揚げそのものがその穴のフタになっちゃうと。

私の考えたやつは中をデコボコにしちゃうわけ。唐揚げが重なっても穴をふさがないように。それで渡したの。そしたら、どこにも作ってもらえないんで。ヨソは、平らなうちに穴を開けてから湾曲させるんで、穴が楕円になっちゃうんですよ。ウチは、湾曲させたあと穴を開けるから、丸なんです。どういう違いがあるかというと、穴が楕円だと油の膜が張っちゃうんですね。丸いと落っこちるんです。チタンなんかも、ウチで最初に作ってヨソがやったときに、私うれしかったもんね。オレの考えたことをまねしてくれるんだって。えへへへ。


──あっ。他社にパクられても「ちくしょうまねしやがって」とか思わないんですか。

いやいや。それは絶対自分のマイナスにしかならないから。ちくしょうと思ったところで変えられないでしょ。だから喜んじゃう(笑)。すると病気にならないの。人も恨まなくなるしね。

──他社の製品を見て、すごいと思ったりまねしたいと思ったこともないんですか。

あの……、ヨソがだいたいウチのまねでやってるから(笑)。あっはっは。こういうふうに鍋本体と取っ手を一体物で作ったのもウチが最初で、ヨソがまねしてきた。昔は胴体と手が別で、あとでくっつけてたのね。

だから、あまりヨソは気にしないですよ。気にしたところでしょうがないですもん。ヨソはウチより安く売って、枚数もたくさんできて、それだけしてりゃ十分なわけです。値段に関してはウチもけっこう無理は聞いてるつもりなんだけど、こればっかりはしょうがない話でね。ウチはもうお得意さんも増やしてないし、決められたとこだけでやってるから。ウチから直接だったら安く買えるだろうって言ってくる料理人もたまにいるけど、それもやらないし。申し訳ないけど取引してる業者を通してくださいと。

──直接は売らないで、必ず問屋かお店を通すということですね。

裏切って信用を無くすのって一瞬でできちゃうんですよ。ところが信用って長い年月をかけないとできない。そういう人が来ることで1秒2秒で信用を崩しちゃったら、やはりそれもウチの会社の失敗になる。だからそういうことはやらないで。知ってる人でも必ずお客さん(小売店)を通してくれと言っているんです。

たたくことでいろんなものが作れる


これは楽器なんですけど。スティールパン。「パン」だからお鍋なんです。ドラム缶をたたいて。これでNHKで生放送やったんです、ここで。女学生呼んで。私とアナウンサーと一緒に演奏したんですよ。これも一時期商売したんだけど、こういうことやっちゃ、うちの信用がなくなると思った。

──信用、ですか。楽器も作れるなんて技術力すごそうですけど。

要は、これ一音一音が商品なんですよ。一個狂うと商品じゃなくなっちゃうわけ。しかも倍音だから、このひとつの「ド」の音の中に、いろんな音を入れないといけないわけ。じゃないと木琴とかのポンポンっていう音になっちゃう。これはピンピンと鳴る。

ここに共鳴させる音を一緒に入れるわけ。だから音痴の人はできないの、わはは。こっちをハンマーでたたいてその音になっても、次のところをたたくとそこに引っ張られて違う音になっちゃう。毎日やってるとおかしくなってきますよ。 

鉄をハンマーでたたいて加工することに特化した工場なので、鍋に限らずいろんなものを作ることができる。
スティールパンしかり。特注サイズの鍋しかり。唐揚げ用の新発明しかり。
大きな設備を必要としないので、設計図や金型が現存しない古い鍋のレストアや復元にも身軽に挑戦できる。

お客さんからの相談で、先祖代々の鍋があって、それがもうどこにも売ってないと。それを作ってもらえないかというのが来て。で、作って納めるとね、まず最初に作った物、この間はかりんとうだったけど、そういうのがウチに届くんだ。
昔からのお菓子屋さんの鍋とか、代々やってるからだんだん傷んでくるでしょ。ところが新しいのが欲しくても、もうどこにもないんだよ。
ウチはそれ、たたいて作れるからさ。


中華鍋を打ち出して70年。
プロから圧倒的な信頼を得ている山田工業所。
確かな技術への自信に裏打ちされたチャレンジ精神と、昔気質の義理に厚い姿勢が同居した、理想的な町工場である。
とりあえず鉄の中華鍋買ってチャーハン作ってみてください。「こういうことか!」とびっくりすると思います。

横浜中華街のプロに選ばれる中華鍋の専門メーカー「山田工業所」さんから教わったこと - メシ通 | ホットペッパーグルメ (via darylfranz)

(via shayol)

Source: hotpepper.jp

  • 6 months ago > darylfranz
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前から言ってるんだが、少子化の原因なんて一言で言い表せる。「フルタイムで働いていたら子育てなんかできないが、フルタイムで働いた賃金がないと子育てなんかできない。」
Twitter / Kumiko_meru (via gearmann)

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  • 8 months ago > gearmann
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m8aa:

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(via petapeta)

  • 8 months ago > m8aa
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私が散々バーフバリを観ろ観ろ言ってる後輩の男の子が、「は〜?インド映画〜?そんなに言うなら見てみますけど〜そんなハマってんのはなすけさんだけでしょ〜?」と言いつつしぶしぶレンタルを借りに行ってくれたが、3件はしごして全部借りれられてた時の後輩の感想
「面白くなってきやがった…」
はなすけさんのツイート (via pipco)

(via pipco)

Source: twitter.com

  • 10 months ago > pipco
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裁量労働制の話、「人間をこれ以上長く働かせたら命に関わるから、最高でもこれまで」という根拠で定められた一日八時間労働が今では「働くなら最低でも八時間から」と当たり前のように思われてるのを鑑みると絶対やべーよな。
ハコ[゚д゚]ノザキハコネさんのツイート (via gkojax)

(via pcatan)

Source: gkojax

  • 10 months ago > gkojax
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裁量労働制の話、「人間をこれ以上長く働かせたら命に関わるから、最高でもこれまで」という根拠で定められた一日八時間労働が今では「働くなら最低でも八時間から」と当たり前のように思われてるのを鑑みると絶対やべーよな。
ハコ[゚д゚]ノザキハコネさんのツイート (via gkojax)

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  • 10 months ago > gkojax
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オウムの村井やったのも、右翼とか言いながら徐容疑者だもんなw
 
あの事件は村井だけが日本人では組織の内部を知っていたから殺したんだろう。
上九一色村にはミグがあったらしいからな。あんなの北のテロ以外なにものでもなかったんだよ。
【速報】朝鮮総連中央本部に銃弾数発撃ち込まれる 右翼団体の男2人を逮捕 警視庁 | 保守速報 (via chikuri)

(via pipco)

Source: hosyusokuhou.jp

  • 10 months ago > chikuri
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男にとって嫁やガールフレンドの情緒が安定していることは、ポルシェ所有並みのステイタスなので、みんな嬉しそうに語る。他の者は両手で耳を塞いでいる。
高木壮太 / twitter (via natu-rou)

(via canceller)

Source: natu-rou

  • 1 year ago > natu-rou
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聞いた話なのですが、3階建てのハイツで大家さんが1階で管理人をやっていたんですが、3階の住人を殺したんですよ。その部屋が空き物件で募集しているんですが、その殺した大家さんが精神鑑定で不起訴になって、戻ってきてまた1階の部屋で大家をやっているという物件があるらしくて。そこは本当に住みたくないなって思います。
『事故物件アワード2017』1位は“あのアパート”『大島てる』管理人が「圧倒的に1位」と語る事故物件とは (via kogumarecord)

(via extramegane)

Source: kogumarecord

  • 1 year ago > kogumarecord
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2018年の精神障害者雇用義務化、本当に楽しみですね。お前らのオフィスに地獄をお届けしてやるからな。楽しみに待ってろよ。
Twitter / ganbare_zinrui (via delihellme)

(via siro000)

Source: twitter.com

  • 1 year ago > delihellme
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もし物凄く、神のごとく買い物が上手くて毎日1000円も得できたとしてだ、それでも年間たった36万5000円にしかならない。資格取って転職して年収300万から400万に上がれば年間100万円得するんだぞ? スーパーで得できる金なんざタカが知れてんだよ

砂鉄さんのツイート (via windsock)

そう言えば何かで「ファイナンシャルプランナーに本音を聞く、貯金を増やすのに最も有効な方法」かなにかの記事で、1番が「給料が上がる職に就く」で2番が「実家に住む(家賃を浮かす)」だった記憶がある。

(via yoosee)

(via tekitouni)

Source: twitter.com

  • 1 year ago > windsock
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あと個人的に好きな話は、マイアミの売人達が麻薬探知犬を誤魔化す為に、コカインを希釈した水を街中に振り撒いた結果イッヌ達がそこら中で吠え続け使いものにならなくなってしまったお話🐶
ALISONさんのツイート (via gkojax)

(via omasayan)

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  • 1 year ago > gkojax
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知らない町に転勤すると同時に結婚したので、新婚当初は長い旅行でもしているみたいだった。初めは喧嘩が絶えなかった。一人暮らしが長かったおれは、自分のペースが乱されることを嫌い、四人兄弟と賑やかに暮らしてきた妻は、おれが本を読んだりスマートフォンを弄ったりしていると「何のために結婚したのか分からない」と嘆いた。
時間をかけて互いの「やり方」を許容したり諦めたりすることで、小競り合いは減っていった。結婚とはそういうものだと思った。譲れるところは譲る。おれは面倒臭がりながらも帰宅時に手を洗ってうがいをするようになったし、妻は先に就寝することで深夜に一人で過ごす時間を与えてくれた。逆に言うと、一人で過ごす時間はおれにとっては譲れないもので、妻にとっては一定の衛生観念が譲れないものだったということになる。他人と暮らすということは、譲れるところと譲れないところ、許せるところと許せないところの最適化のようなものだ。幸い、おれと妻はその調整がうまくいった。もともと二人とも温厚で面倒臭がりなこともあって、喧嘩をほとんどしなくなった。後回しにしていた新婚旅行で海外に行き、その後も住み慣れない町の名所を観光でもするように楽しんだ。土地のものを食べ、文化や人に触れて過ごした。幸せな時間だった。
二年後に長男が生まれた。子供を持つことは過去に経験したことない種類の幸福だったけど、一方で途轍もなく大変なものだった。二年かけて最適化された夫婦のバランスは見直しを余儀なくされ、その過程でまた小競り合いが起きた。妻は仕事を辞めた。入浴と寝かしつけはほとんど妻がやった。育児の中でも最も大変な仕事だ。長男は「おかあさんがいい」と言っておれと風呂に入ることを拒み、あやしても眠らなかった。妻は小さい長男が夫に懐くことを諦めた。朝も夜も無関係に泣き出す長男をあやし、ゆっくり湯船に浸かりたい日も長男のペースで入浴した。おれは何だかバツが悪くて、分担していた家事を自分でやるようになった。それでも妻とのバランスが取れているとは到底思えなかった。妻も同じことを考えているようで、長男が泣き止まない日は不機嫌になっておれに当たった。おれはそれを許した。互いへの不満と諦めと罪悪感を抱き合い、おれと妻と長男のバランスはそのまま固定された。
二年後に次男が生まれた。また家族のバランスを見直すことになった。妻は次男につきっきりで、長男に構えなくなった。長男は自分だけのものだった母親を奪われたと感じ、今でも次男と仲良くやれない。だからせめて、おれが長男と長めに接するようにした。少しずつ手のかからなくなってきた長男に対して、無意識に厳しくなってしまうことに、妻は罪悪感のようなものを抱いている。
一年前に東京に戻ってきた。通勤時間が長くなったせいで、残業して帰る頃には家族は寝静まっている。一人になれるのは今もこの時間だけだが、妻にはその時間すら与えられない。風呂に入って本を読み、食器を洗って洗濯物を畳む。歯を磨いて寝室に移動すると、長男はプラレールを持ったまま、次男は妻のおっぱいを咥えたまま、二人とも穏やかに眠っている。今日も四人に四者四様の一日があった。「もしも次男が生まれていなかったら?」長男は今でもお母さんを独り占めできていただろう。「もしも長男が生まれていなかったら?」おれと妻は新婚の時のように互いだけを見つめ合って生きていたかも知れない。「もしも結婚していなかったら?」今でも深夜まで時間を気にせず音楽を聴いて本を読んで毎晩のように映画を観ていただろう。毎日は選択の連続で、そこで選び取ったものは積み重なって石のように固まり、その人の人生に姿を変えていく。無数の「もしも」の先に「今」があり「今」は無数にあった「もしも」のうちのひとつに過ぎない。寝巻きからはみ出た妻の乳を揉むと、手の平からはっきりと伝わってくる。おれの人生の感触が。
生きている意味は生きている日々だという説を支持する by 餅男 | エッセイ投稿サービスShortNote(ショートノート) (via nowonsalesjapan)

(via shayol)

Source: nowonsalesjapan

  • 1 year ago > nowonsalesjapan
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「申し訳ありません。その機種は大人気で在庫が薄くなったものですから、MNP非対応をということにさせていただいております」

 大尾嘉さん、高止まりしている日本のスマホ料金に風穴をあけようという御社が、そういう小細工で客を不人気機種に誘導するのは、あまり感心しませんな。

シニア記者、スマホ勉強会で逆上す (6ページ目):日経ビジネスオンライン

そんなんアリか

(via shi3z)

(via dojiahol735)

Source: business.nikkeibp.co.jp

  • 1 year ago > shi3z
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